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【メディカル】中高年の膝の痛みは放っておいてはいけません

◆中高年の膝の痛みのほとんどは「変形性膝関節症」とその予備軍

当院へお越しのお客様の中でも膝の痛みを抱えている方は多いです。

それぞれ原因は様々ですが、ほとんど のケースでは変形性膝関節症が関係しています。

変形性膝関節症(以下、OA)とは、膝関節の軟骨が何らか の原因ですり減って劣化していく疾患です。

関節軟骨は本来、膝のクッションの役割を果たしています。

この軟骨がすり減ることで、膝の上下の関節の隙間が少しずつ狭くなっていき、進行すると上下の骨までがすり減って、痛みや動きの制限を引き起こします。

中高年の膝の痛みの多くはOAが関係しており、膝のこわばりや違和感、時々痛いなどの初期症状(予備軍)から、徐々に日常生活動作で痛みを感じるようになり、末期では膝が曲げられないほどになります。

女性は45歳以上、男性は65歳以上になると発症しやすくなり、女性は男性の3~4倍なりやすいと言われています。

その理由としては、加齢により軟骨を守る女性ホルモン代謝が低下するために膝に負荷がかかりやすいことや、男子ホルモンの少ない女性の方が筋力が少なく、負荷が大きいことが挙げられます。

 

◆三大リスクは中高年・女性・肥満!

男性よりも女性の方がOAになりやすいデータが出ていますが、一番のリスクは年齢と言われています。

筋力低下の著しい50代からは患者数が増加し、最も多いのは60代以降の女性です。さらに年齢が上がるほど 患者数は増えていきます。

高齢+重症化しているケースでは、治療も難しくなります。

また、この後説明しますが、体重(肥満)は膝にとって大きな負担になります。

軟骨をすり減らす原因にもなりますので要注意です。

加齢や性別はどうしようもありませんが、肥満や筋力不足は個人の努力で改善が可能です。

 

◆歩く時、膝には体重の5倍の負荷がかかっている!?

全身の関節の中で最も負担がかかるのが膝と言われています。

立つ・座る・歩くなど、普通に生活しているだけでも、ひざには体重の3~10倍の力が加わっています。

よく肥満が膝への負担の原因と言われますが、体重が増えるほど膝にかかる負担も増すからです。

例えば体重50kgの女性の場合、

立つ…150kg(体重の 3倍)

歩く…250kg~350kg(体重の5~7倍)

階段の昇り降り…350~500kg(体重の7~10倍)

これだけの大きな負担が膝にかかっています。

膝関節を覆っている滑らかな関節軟骨と関節液が骨への負担を吸収し、さらに関節を覆う筋肉や腱が膝にかかる負荷を軽減するため、これだけ負荷がかかっていても、膝は滑らかに動くことができます。

 

◆膝を酷使することが痛みの原因ではない!

OAが進行すると、関節の摩擦のために関節軟骨が磨り減って炎症が出るので、膝の痛みが起こります。

関節内に摩擦が起こる原因は使いすぎ!?かというと、そうではありません。

若い頃から運動選手だった人が60歳以上になった時の、OAの発生頻度を調べた研究では、長年サッカーやマラソンで走ったからといってOAの発生率が多かったという結果は出ませんでした。

もちろんスポーツで膝の靭帯を怪我したり、手術を行ったケースではOAになりやすいことはあります。

しかし、酷使する=関節に摩擦が起こる(負担をかける)ということではないようです。

痛みがあるときはとにかく安静にする!は間違い!? 「痛みがある時は安静にしてください」と言われたことがあるかもしれません。

確かに痛みがある動きは基本的にしないほうがいいです。

しかし、安静にしすぎてじっとした生活をしたり、膝の関節自体を動かさないでいると、神経や筋肉の機能が衰え、関節も硬くなるため、逆に膝への負担が増えて症状は悪化していくケースも多いです。

高齢者が一度寝たきりになるとなかなか元のように動けなくなることと似ていますが、医学的には「廃用性症候群(生活不活発病)」と言います。

体の機能を使わないことにより、体だけでなく頭(神経の指令など)の機能も衰えてしまうことです。

膝を使わない生活をし過ぎると、膝の機能はますます悪化してしまいます。「できることを無理なく積極的に行う」ことが重要です。

 

◆膝の使い方を変えるだけで痛みが改善できるかも!?

太り過ぎや筋力低下は、確かに膝に負担をかけますが、もっと良くないのは「間違った膝の使い方」です。

臨床経験上、膝を痛めてしまう方はほとんどが間違った膝の使い方をしています。

例えば階段を昇る時に痛みを感じる方は、経験上ほぼ間違いなく膝がつま先よりも前に出ています。

《膝がつま先より前に移動→膝の負担大→痛めやすい》

 

《膝がつま先より前に出ていない→膝の負担小→痛めにくい》

 

上の3枚の写真のように膝が深く曲がった状態で踏み込むと、膝への負担が大きくなるので痛めやすいです。

一回一回は大した負担ではありませんが、長年の蓄積で大きな負荷になってしまいます。

逆に、下の3枚の写真のように膝が前に出過ぎないように、膝下を出来るだけ床と垂直に保って昇ると膝の負担は小さ くなります。

これを意識するだけで、膝の痛みが改善していくケースは多くあります。

膝の使い方が悪いことが痛みの原因かもしれませんよ。

階段で膝の痛みを感じる方は意識してみてください!

 

◆膝の痛みは絶対に放置してはいけません!

膝の痛みは絶対に放置してはいけません。

なぜなら悪化すると日常生活に多大な支障をきたし、QOL(ク オリティ・オブ・ライフ= 生活の質)を著しく低下させるからです。

これまで治療をする中で、本当に辛い 状態になってしまった方を多く診てきました。

立つ、しゃがむなどの単純動作で痛みを感じるのは相当な苦痛ですし、何より日々の外出が億劫になり、引き込まざるをえなくなってしまいます。

また悪化してからでは、できる治療やリハビリの選択肢も限られるので、改善までに時間を要します。

膝の痛みは絶対に放置せず、違和感を感じる段階で専門家に相談するくらい神経質になっても良いでしょう。

膝は大事にしてください!!